今回、楽しみにしていたことは、自分自身が4日間受講生として、教育のプロセスを「体験」するということでした。体験を通じてしか、つかめない核心、そして確信があります。

思考ツールそれぞれについて学んだ、ことはもちろん、それを教育するプロセスに感心しました。ここまで徹底して分解して、定義して、実習させて、段階的に取り組むことで、マスターすることができるようになる、思考ツールを自分のものとすることができる、このことを実感しました。

たとえば、ロジック・ブランチでも最初から完全をめざさず、まずは「もし・・・ならば、結果として…」 という関係を図解化して記述することをすすめていく。多少、間違っていても自分の現時点での理解の範囲でどんどん分析をすすめてして。その上で、「正当な懸念のカテゴリーを示して、もともとの分析モデルをブラッシュアップしていく、一人で、そしてグループで、より良い分析に発展させていくということがすすめられる。

クラウドの場合も、まずは対立を記述し、つぎにneedを明らかにし、そして共通の目標を見いだし、それぞれの関係の仮定を探っていく。これを一挙に全体像を示してやるのではなく、一つひとつを確実に、段階的に学ぶようにすすめられている。

そして実際的な解決に結びつくことを重視しているので、ここでも完全を無理に追求しない。共通の目標の設定については、外部対立のそれぞれの側から考察すると、厳密には共通の目標となっていないのではないか、という論点もある。しかし、大きな目的設定、共有できるゴールを設定することで、ともに問題を解決しようという土俵をつくる、代替案を生み受容できる基盤をつくるわけであるから、ここは厳密性ではなく、実際性を優先するということを学んだ。

これらをどんどんすすめるために、ていねいな相手を傷つけない「質問」がガイドになる。答えを言うわけではなく、質問なので、どんどん自分で考えるようになる。このプロセスそのものが「楽ししリと感じるようになる。自分およびグ、ループで、理解が深まるから、つくられていくモデルについて自分は説得力を感じる。そして、場合によっては自分でも当初考えていなかったことの発見、つまりブレイクスルーが起こる。これは本人にとって感動的なことである。だから、結果として、自分の思考を変え、自分の行動を変えることにつながる。とにかく自ら考え、その結果として実際的な解決に結びつくという大きな成果を生むことになる。素晴らしい。

模範によって教える、ガイドで考える、グループで、考える、個人で考える、ふりかえり、フィードバック、評価、という進め方も、普遍性のある教育のメソッド、手順であると理解した。教える時間より、自らあるいはグ、ループで、取り組む時聞が多いこと、そしてそこからのリフレクション、気づきゃ疑問に答えることで理解を深めていくこと、これが結果として高い教育効果を生む、なによりも自分で学び考えることを楽しむようになる。最後に、これは初日の感想でも記述したことであるが、ロジック・ブランチを構築する際に、持っている知識あるいは洞察が大きく左右するということも学んだ。

たとえばロジック・ブランチでの湖と水蒸気問題での「なぜならば」 について、水が蒸気になるのは「飽和蒸気圧」の原理が理由だし、水蒸気が上に昇るのは比重の問題でもある、冷えて蒸気が水に戻るのも「飽和蒸気圧」の問題だし、雲ができるのは水分子の結合力が大きいということでもある。これらは高校レベルの物理の知識で、あるが、これを知っているかどうかで「なぜならば」の説明は大きく変わる。同様に、クラウドのルピコン河を渡る問題でも古代ローマの歴史についての理解があるかないかで、分析の中身は大きく変わってくる。講師が「なぜならば」「need」などの説明はとても難しい場合が多い、重要な課題であるという意味が、なるほどだと感じた。