教育のためのTOCとは
教育のためのTOCは、世界20か国以上の教育の場で活用されている、とてもシンプルな考えるためのツールです。
教育のためのTOCは、ものごとのつながりを考える「ブランチ」、意見の対立について考える「クラウド」、目標を達成する方法を考える「アンビシャス・ターゲット・ツリー」の3つのツールで構成されています。
これらの思考ツールは、まだ文字の書けない幼児でも活用でき、また発達障がいなどのコミュニケーションに支援が必要な方々とのコミュニケーションにおいても大きな成果が確認されており、多様な人々とのコミュニケーションと思考に対して、有効に活用されています(「事例と活動記録(リンク)」をご参照下さい)。
また、教育のためのTOCのパワーは、ビジネスの場でも認知され、子どもから大人まで広く活用されて来ています。
クリティカルに考え、対話するための3つのツール
ブランチ
ブランチは、出来事と出来 事のつながりを深く理解す るためのツールです。 過去 や未来の因果関係を明 瞭に考えることにより、 筋 の通った決断を下すことが できます。
クラウド
クラウドは、自分の中にあ る悩みを解決したり、他人 との対立を解消するため のツールです。 二項対立 に陥らずに、クリエイティブ な解決策を考案すること ができます。
アンビシャス・
ターゲット・ツリー
アンビシャス・ターゲット・ツ リーは、目標を達成するた めに、 何が必要かを分析 し、戦略的な計画を立て るためのツールです。 どこから手をつけて良いか わからないようなゴールに も、一歩一歩近づいていく 力が身に付きます。
学びのステップ
-
国際認定プログラムに参加し、3つのツールを学習する
-
国際認定プログラムのグループワークを支援するファシリテータになる
-
国際認定プログラムのメイン・ファシリテータを務める、マスター・ファシリテータになる
-
日本国内の変革をリードする、マスター・リード・ファシリテータになる
イベントカレンダーはこちら
生い立ち
History of Tool Development
教育のためのTOCの3つのツールは、イスラエルの物理学者、エリヤフ・ゴールドラット博士によって開発されました。このツールのベースには、ゴールドラット博士が作り上げた「制約理論(TOC:Theory of Constraints)」という理論があります。
制約理論は、『ザ・ゴール』という書籍により世界中で注目を集めました。『ザ・ゴール』は、これまで1000万人の方々に愛読され、今なお、ベストセラーとして販売されてます。
世の中の「つながり」と「ばらつき」を考えるなら、その「つながり」の中で必ず、相対的に弱いところ(制約)が存在する。その弱いところに、集中して、お互いに助け合いながら取り組むことが、全体最適となる。
これがTOCの核となる考え方です。生前、ゴールドラット博士は、人々が充実した人生を送るためには、真の全体最適を目指し、助け合いながら働かなければならないということを、常にメッセージとして伝えていました。そんな博士が最後に生み出したのが、「教育のためのTOC」だったのです。
教育とは何か?それは、子ども達が充実した人生を送ると同時に、各々の行いに責任を持つ大人になるための準備をすることなのではないか?
教育のためのTOCは、3つの考えるためのツールの活用により、効果的な思考とコミュミケーション能力の向上を実現します。それにより、この定義に従った教育が広く実施されることをビジョンとして活動を続けています。
ゴールドラット博士について
About Dr. Goldratt
私は、世界をより良くするために、そして人生をより意味のあるものにするために、知識を追求すべきであると信じています。」
エリヤフ・M・ゴールドラット博士は、制約理論の生みの親であり、教育のためのTOCの設立者です。彼は、科学者、ビジネスリーダー、そして10冊の本の著者でもあります。これらは23ヶ国語に翻訳され、3百万部以上売れています。ゴールドラット博士は、ビジネスウィーク誌では「天才」と、フォーチュン・マガジンでは「製造業の教祖的存在」と評されました。しかし、何百万人もの子供たちや、その指導者たちにとってのゴールドラット博士は、自らの力で考えられるようにし、習ったことと自分の行動が意味が通るように、そして責任を持てるようにした、博愛的教育者なのです。
ゴールドラット博士は、人々が誰もが傷つかないウィン‐ウィンソリューションを見つけられるようにすることで、よりよい世界を後世に残したいと望んでいました。この目標へ向けて、子供と子供の指導者たちが制約理論を学び、適用できるように、博士は教育のためのTOCを設立しました。
ミッション
Mission
教育のためのTOCは、TOCのツールと明確なビジョンを持った世界中の教育者のシナジーを通じて、子どもも大人も、効果的に考え、コミュニケーションを図れるようにすることにより、子どもと大人の教育を著しく改善します。
教育のためのTOCと、子供を擁護するすべての人は、共通の目標に向かって共に歩み、より良い世界を後世に残します。
行動規範
code of conduct
TOCのツールは、我々の行動により誰も傷つくことがないようなウィン‐ウィン ソリューションを見つけ、実行するために生み出されました。
教育を劇的に改善するというゴールへと向かって努力するにあたり、教育のためのTOCにたずさわる人々は、TOCツールの意図をくみ取った上でこれを使います。
教育のためのTOC 本部および世界各国の活動
Activities around the world
教育のためのTOCは、世界20か国以上の国々で活用され、今現在も世界中に広がり続けています。子供から大人まで、国籍・人種問わず幅広く使用されているこのツールは、世界中で自ら考え、選択し、行動できる人々を増やし、成果を上げています。このページでは世界各国から集められた実際の活用事例をご紹介します。
本部についてTOCfEはキャシー・スエルケン氏を会長とする国際的な組織です。本部はアメリカのフロリダで、定期的に世界でTOCfEのリーダー達が成果や知見を共有し知識体系を発展させるカンファレンスも行われています。
ポーランド「Chest of Secret」(Maciej Winiarek)の事例紹介
ポーランドでは、TOCfEのツールをカードやマットを使い可視化して、先生への指導方法のトレーニングも含めたパッケージとして開発されたChest of Secretと呼ばれるものが学校を中心に使われています。以下は2014年に行われたTOCfE国際バーチャルカンファレンスでの発表要約です。
発表では冒頭に子供たちが日常的に抱える問題が数点列挙されており、続けて改善点が示されています。(以下要約)
子供は、話を聞いても、最も重要な事実がなんだったかを記憶することがなかなかできないことがあります。短い話を聞くときほど、それは顕著になります。
子供たちは先生に話の一貫性を確認するために質問をする必要があります。 Chest of secretでは、4種類のストーリーが用意されており、それらを使って学習をします。それらは1つ1つのシーンがカードで表されており、子供たちは話を聞いている間、話の筋を表す絵を見ています。そして彼らは絵を論理的な順番に並び替えることで大きな枠組みで考えられるようになります。ロジックブランチを使えば、このように簡単な図形を用いるだけで、一つのものとして考えられるようになります。
ロジックブランチを使用してから2か月後(6回)、子供たちは1回文章を読んだだけで、長い文章を再構築できる力を身につけました。2、3か月後でも間違いなく話を再構築できるようになりました。
次に、子供に物語について何か尋ねたとき、子供たちはうまく物語を説明することができないことがほとんどです。子供たちは、覚えていることを全て話そうとしてしまいます。
そこで、Chest of Secretのロジックブランチのカードを使っています。子供たちは因果関係が示されているロジックブランチのカードを受け取ります。そこには「もし、~ならば」が一段階しか書かれていません。生徒は次のボックスの絵を書いたり、口頭で説明しながら完成させます。そうして他の部分も埋めていき、物語を完成させるのです。こうすることで、ばらばらの絵や写真の中に因果関係を築いていくことができます。次に何が起こるかを考えることが出来るのです。
ここで一つ言いたいことがあります。物事の因果関係を論理的に話すことは大変困難ですが、因果関係が可視化されているとそれは容易になります。生徒(例え障がいがあっても)は難しい表現をしなくて良いし、長い文を作る必要もありません。ロジックブランチは、子供たちに適切な場所に物を配置することを可能にし、一貫した物事の中で、前に何が起こって、次になにが起こるのかを説明できるようになる手助けをします。論理的に思考し、話すことを可能にするのです。
****
また、生徒は時に物事の深い理解をしないままその良し悪しを判断せずに受け入れてしまうことがあります。
大人でさえ物事の何が良くて何が悪いかということを判断しかねる場合もあるくらいですから、子供たちにはなおさらのことでしょう。子供たちにとっては、物事の善悪というものは抽象的なものであるからです。 ここでこのアイコン(喜怒哀楽が描かれている)を使います。
子供たちにもし誰かの物を盗った時にはどういう気持ち?と聞くと、左(盗った時のような)のようなアイコンを選びました。真ん中はそれを隠した時の気持ちを表すアイコンで、右は誰かに自分のものを盗られた時のアイコンです。子供たちは、まだ自分が感じる感情がどんな名前なのかということを知らないので、アイコンを使うことによって子供たちの表現がより容易になります。そしてこのツールを使って数週間後に先生はそれがなんという名前の感情かを教えるのです。そのことによって、子供たちは名前を覚えることができ、それを使って感情とはどういうものか議論できるようになります。
生徒はキャラクターの感情を分類することができる、かつ、その感情の名前を知っています。 この抽象的なアイコンを使うコンセプトは、物語をより簡単に説明し、把握できるようにするためのものです。 **** 次に、小さい子供たちは何事も大人からの答えを待っていることがあります。 この問題に対してはアンビシャスターゲットツリーを使います。 このツールを使うと例えばクリスマスパーティーなどを計画し、実行するためになにをすれば良いのか、どうやってやればいいのかがわかるようになります。さらに計画すべてのことに責任を持てるようになります。Chest of Secretでアンビシャスターゲットを使った結果、数週間後、彼らはとても独創的に様々な解決策を自ら見つけられるようになりました。
一番重要なことは、子供たちがこれを大人の手に頼らずやったことです。どのように実行すればいいかを知っているので、自らやりたがりました。
次の問題は、子供たちはすぐ泣いてしまうということです。 子供たちは障害を見越して把握する術を学ぶ必要があります。 ここで一つ注意があります。
小さい子供たちは「障害」という概念を知りません。障害とは何か説明するために身体を使って説明することにしました。そこで私たちは、ある目的地を定め、その道の途中に椅子を置きました。そこで小さな驚きがあったのですが、子供たちは椅子を障害物だとは思わなかったのです。
なぜなら障害という概念を知らないからです。 何か達成したい事があるときにはいつも障害がついてまわります。その障害を把握していれば、よりよい準備が出来るというものです。アンビシャスターゲットツリーを使えば子供たちは、障害(これまで実生活で彼らが気づけなかった)を見つけることが出来ます。
Chest of Secretを使ったプログラムは以下の物で構成されています。このパッケージにはシナリオ・ツール・マット・ゲームが入っています。シナリオがプログラムのキーとなっており、30個の例題が入っています。全てのシナリオの構成は同じになっていて、その構成は、このレッスンの目的、ねらい、・明確な手順、・どのツールを使えばよいか、・家でやる際のヒントです。このプログラムは子どもたちの日常生活に関連する5つのオリジナルストーリーに基づいて作られています。
彼らの生活に基づいて作られているため、子供たちは熱心に参加することができます。 私たちはブランチとクラウドの型がプリントされているマットを作りました。このマットがあるおかげで、子供たちはストーリーに集中できるし、飽きずに長い話を聞いたり、読んだりすることができます。
私たちの目的は子供たちにTOCのツールを教えることではありませんでした。私たちの目的とは、プログラムの一年後に彼らがそのツールを彼らの生活の中で活用することでした。
(以上、Chest of Secretのキットの概要)
翻訳者概観:
ポーランドのChest of SecretはTOCfEのツールをパッケージ化した(先生へのトレーニングを含め)ところがユニークなところです。fEのツールをマットなどの実際の物を作り可視化したことで、頭だけではなく身体も動かしながら考える力を身につけることができます。また、長年の先生と子供たちのセッションから詳細なフィードバックを得ており、学習者の学びが最大限になるよう設計されています。
こうしたキットがあるためにツールを使う際の導入が容易になり、キットさえあればどこでもツールが使えるようになっています。とても汎用性が高く、ポーランドの学校ではカリキュラムの1つとしても導入され、学校のテストの成績はもちろん、子供たちの生活の充実にもつながっているとの報告です。 このようなChest of Secretのキットを使った取り組みは、日本でも保育士さんなどを中心に試験的に始まっています。
土井 柾輝
学術雑誌『教育のためのTOC 研究と事例』
Academic journal
教育のためのTOCを学び使うすべての人々へ!
これまでは、たくさんの方々の事例を年一回のシンポジウムでみなさんと共有してまいりましたが、さらに情報交換の機会を増やそう!ということで、2018年秋、学術雑誌『教育のためのTOC 研究と事例』を刊行いたします。デジタル版(PDFファイル)で、年1-2回の発行です。
シンポジウムでは10分間のプレゼンテーションで事例をご発表いただいていますが、学術雑誌『教育のためのTOC 研究と事例』では、事例のほかに論文・書評なども掲載します。
シンポジウムではこれまで取り上げることができなかったテーマについても扱いますので、どうぞご期待ください!
コンテンツを募集しています!
『教育のためのTOC研究と事例』では、現在下記のコンテンツを募集しています。第2号への投稿をお待ちしています。(投稿原稿は未発表であることを前提とします。)