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執筆者の写真吉田 裕美子

The Change Leaders:変化を牽引するリーダー達に聞く <br><br>第1回「ファシリテーターの武器としてのTOCfE」

対立の中に存在する仮定を明確にしたい——「対立を見える化すると何かがわかる?何かが変わる?」というテーマで勉強会を開催されたそうですが、どのような内容だったのでしょうか? 佐々木順一さん(以降 佐々木):毎月開催している東京支部の定例会で、意見が対立した場合の道具を紹介したいと思いました。以前、藤田さんが「TOCをファシリテーションの道具として使っている」と言っていたので、TOCfEのクラウド(対立解消図)をいつかやりたいと思っていたんです。 意見が対立したときのアサンプション(注記:「仮定」のこと)をしっかり書き出して共有することができれば、それがファシリテーターの武器になるのではないかと考えていました。なので、クラウドを書く際、アサンプションもしっかり書きましょうということを伝えました。 ——アサンプションを書き出すことで、それがファシリテーターの強い武器なるというのは、非常に印象深い言葉なのですが、もう少し具体的に教えていただけないでしょうか? 佐々木:ファシリテーターが対立を解消する時、異なる意見の背景をしっかりつかむことがポイントとなります。その人がなぜ、その意見を主張しているのか、それが、個人個人の持っているアサンプションなんですよね。それを見えるようにすることで、相手の考え方、相手の立場にたって物事を考えられるようになる。この点に関して、TOCfEのクラウドは非常に適したツールなのです。対話にかける手間が1つ減ると言うんでしょうか。「私はこの対立をこういう風に捉えているんですよ」ということがお互い見えるようになることが、ファシリテーターが対立を扱う上で、大きく役立ってくれるのです。

書き出すことの意味を改めて発見しました——実際定例会を開催してみて、改めて発見したことは何かありましたか? 佐々木:勉強会を開催する前は、今言ったように「アサンプションを共有する」ことに意義を感じていたのですが、実際やってみると、「クラウドを書く」こと自体が問題と向き合うことになるということに気づきました。 言葉だけで対立の状態を考えていると、自分側の主張のみに意識が偏るので、思い込みを明確にすることが難しかったり、解決なんてムリだとあきらめたくなったりします。でも、紙の上に一旦書き出してみると、相手の主張も含めて、対立する意見を平等に扱うことができるんです。 ——藤田さんは、意見が対立している場のファシリテーションということで、何かご意見などありますか? 藤田国和さん(以降 藤田):意見が対立した時、人は、自分の意見を主張することばかりに集中してしまいがちです。オレはこう思う、いやオレはこうだ・・という感じで平行線になりがちです。でも、クラウドの書き方に従って問いかけていくと、何を望んでいるから、または、何を避けたいから、こう主張しているという部分を明確にしなければならなくなります。更に、「共通の目的ってない?」と問いかけることで、「あ、一緒のことを望んでいるのに、方法が違っているんだね」ということが明確になって行きます。そこまで明確になると、「じゃあ一緒に解決して行こうか」という方向に場が動きやすい。そこが良いと思うんですよね。 ——佐々木さんの「対立する意見を平等に扱うこと」、藤田さんのクラウドが構造として持っている要望を明確にするプロセスとその問いかけ、どちらもクラウドの大切な要素ですが、まさにそれがファシリテーターをバックアップする役目を担う訳ですね。 では、実際の勉強会はどのような構成で進められたのか教えて頂けますか? 佐々木:31名の方がご参加くださいました。最初の15分ぐらいレクチャーし、20〜30分ぐらい、こちらで用意したテーマ(物語)を使って、ガイドしながらグループでクラウドを書く時間を作りました。その後、対立している問題の例を、参加者にたくさん出してもらい、投票制でテーマを数個に絞り込みました。参加者には、自分が興味あるテーマに入ってもらって、グループでその対立をクラウドに書くというワークを行いました。後半のグループワークが1時間半ぐらいだったと思います ——この時間配分でやってみて、参加者はすぐに理解できた様でしたか? 佐々木:参加者はファシリテーションを学んでいて、これまでも様々なフレームワークを活用している方が多いので、わりとすっと理解される方が多かったように思います。 グループでワークを行っていたので、分からない人はグループ内や、自分たちもサポートしてうまく行っていた感じでした。 ——勉強会の中で印象に残った出来事などはありましたか? 藤田:あまり具体的な内容にはここでは触れられませんが、とある対立に関してクラウドを書き始めた方が、ディスカッションを進めていくうちに、自分がとりたい行動は何のためなのかということに気づかれたんです。「あ~、そうか!」という感じで。その気づいた瞬間の表情が非常に印象的でした。自分が悩んでいたのはこういうことだったのかってことに本当に気づいた瞬間だったことが伝わって来ました。 ——行動の裏にある、本当の要望に気づくって、難しいことですよね。それはその方にとって素晴らしい体験だったでしょうね。

1枚の紙で問題の状況が手に取るように分かるようになる。それを活用したイベントができたら・・ ——充実した勉強会だったようですが、今後、TOCfEを扱う様なご予定は決まっていますか? 佐々木:アンケートでは、もう1回やって欲しいという声があります。ただ、東京支部では今のところ次の開催は未定です。また、クラウド以外のツールもやってみたい気持ちはありますが、2時間程度で何ができるかな・・と思うと、再びクラウドを扱うことになるかもしれません。 ——テーマや時間的な問題など、いろいろと制約はつきものですよね。もし、これらの制約がすべて存在しないとしたら、どんなことをやってみたいですか? 佐々木:沖縄と札幌など、遠隔地で同時開催してみたいですね。同じ題材で別の地域の人がクラウドを書くと、どんな違いがあるか見てみるのも面白そうです。 藤田:これまで、東京支部と富山サロンでのみTOCfEを扱いましたが、それ以外の支部でもやってみたいです。最近、東北スクエアの方、具体的には宮城や秋田、福島の方と話す機会が多いので、そちらで開催してみたいです。 ——東北のこのエリアで開催できたら、意味のあることができそうな気がしますね。 藤田:クラウドを書いてしまうと、これだったらこんなアイデアあるよね・・という解決策を提出しやすいですしね。 ——もし、それが実現したら、何がおこりそうですか? 佐々木:例えば福島などの方が今の自分たちの問題をクラウドに書いてくれたら、被災地の問題が我々でも手に取るように分かるようになるのではないかと思います。言葉で聞くよりきっと伝わってくるものがあるはずだと。 藤田:問題を見える化する勉強会があるならば、もう一方で、解決策の考え方を集中して行う勉強会も面白いかもしれません。Win-Winのソリューションの導き出し方のみ、みっちりやるのも1つのアイデアですね。 また、権威あるファシリテーターの方々は、対立は怖いものじゃない、もっと楽しもうよ、とか、むしろ歓迎すべきだと言いますし、本にもそう書いてあります。でも実際の現場では対立は嫌だと感じる人の方が多いと思うんです。その点、クラウドを知っていれば、対立って意外と面白いと本当に思うようになります。ファシリテーターがそのことがちゃんと腹に落ちて、「対立は歓迎すべきもの」とはこういうことか・・と分かるということに、大きな意味があると思います。 それができれば、富山や金沢あたりの方言で言うと、「いいがになる」(好い加減になる)ことが沢山ありそうです。

インタビューを終えて 会議の席で意見が対立する、場が紛糾する・・・そんなシーンでそれぞれの意見を平等に扱い、要望を引き出す。言葉だけでは非常に難しいことですが、TOCfEのクラウドというツールが、場を運営するファシリテーターの方々の強い味方になってくれることは間違いないということが、お2人の会話から伝わって来ました。対立を歓迎すべき理由がTOCfEを使うと分かる・・という藤田さんの言葉も印象的でした。 たった1枚のシートで問題の構造が誰にでも分かるようになるクラウド 私達はこんなことで困っているんです。そのシートを見て、援助の手を差し伸べられる人が出て来たら、クラウドの活用の場が広がって行きそうです。 今、コミュニケーションや対話の重要性がようやく注目されてくるようになってきました。対話を促進する役割を担うファシリテーターのための武器として、TOCfEが活用され、対話の場から多くが生み出されて行くことを願っています。 尚、TOCfEのツールの1つ、「クラウド」ってどんなもの?と思った方は、是非藤田さんのブログ「勝手気ままにクラウド」を読んで見て下さい! ■今回お話しを伺った方のご紹介 佐々木順一様 特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会 会員 Facebook: https://www.facebook.com/junichi.sasaki.35 藤田国和様 特定非営利活動法人 日本ファシリテーション協会 会員 Facebook: https://www.facebook.com/kunifuji ブログ:「勝手気ままにクラウド」 ■聞き手 田裕美子 NPO法人教育のためのTOC 理事 Facebook: https://www.facebook.com/yumiko.yoshida

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